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【発明の名称】 特殊仮撚り毛羽加工糸、その製造方法及び製造装置並びにそれを使用した織物及び編物
【発明者】 【氏名】知野 國夫
【課題】糸条の表面に毛羽を備え、嵩高感に優れ、肌触りが良好でソフト感に富むとともに、ベルクロエフェクトを生じにくい特殊仮撚り毛羽加工糸並びにそれを使用した織物及び編物を提供する。また、このような特殊仮撚り毛羽加工糸を連続して安価に生産することができる製造方法及び製造装置を提供する。

【解決手段】特殊仮撚り毛羽加工糸は、タスラン糸11に仮撚り加工を施すとともに、その加工時において起毛加工を施すことにより、糸条表面でループ、コイル等を形成していたフィラメントが切断されて形成された毛羽12を有している。そして、タスラン糸11に仮撚り加工を施すことにより、糸条が揉まれ、嵩高感に優れ、ソフト感に富むものとなり、毛羽12により肌触りが良好となる。さらに、ループ、コイル等に毛羽12が入り込んで面ファスナーのように糸条同士がくっつきあうベルクロエフェクトが生じにくくなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フィラメント糸よりなる原糸に対し、その表面を毛羽立たせるための摺接部材に擦過させながら仮撚り加工を施すことにより形成され、その表面に毛羽を備えたことを特徴とする特殊仮撚り毛羽加工糸。
【請求項2】 前記摺接部材は、少なくとも原糸が擦過される箇所に粗面を有するセラミックスであることを特徴とする請求項1に記載の特殊仮撚り毛羽加工糸。
【請求項3】 フィラメント糸よりなる原糸を給糸し、この原糸を、加撚及び解撚の少なくとも一方を施しつつ、原糸の表面を毛羽立たせるための摺接部材に対して擦過させることにより、仮撚り加工を施すと同時に、その表面に毛羽を形成することを特徴とする特殊仮撚り毛羽加工糸の製造方法。
【請求項4】 フィラメント糸よりなる原糸を給糸する原糸供給部と、前記原糸供給部から供給される原糸を加撚するとともに解撚する仮撚り加工部と、仮撚り加工部の上流側及び下流側の少なくとも一方に配設され、加撚時又は解撚時の原糸が擦過されることにより、その表面を毛羽立たせるための摺接部材とを備えたことを特徴とする仮撚り加工糸の製造装置。
【請求項5】 請求項1又は請求項2に記載の特殊仮撚り毛羽加工糸を使用して織り上げて得られる織物。
【請求項6】 請求項1又は請求項2に記載の特殊仮撚り毛羽加工糸を使用して編み上げて得られる編物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、仮撚り加工糸であるとともに、その表面に毛羽を有する毛羽加工糸でもある特殊仮撚り毛羽加工糸、その製造方法及び製造装置並びにそれを使用した織物及び編物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、仮撚り加工糸は、複数本の長繊維より構成されたフィラメント糸よりなる原糸に対し、仮撚り加工を施すことにより製造されている。この仮撚り加工は、原糸を加撚し、その撚りを加熱保持した後、解撚する加工方法である。このようにして形成された仮撚り加工糸は、長繊維(フィラメント)がねじれ、ループ等を形成することにより、例えば羊毛、綿等といった天然繊維のような捲縮が付与され、嵩高感に優れた糸条となり、肌触りが良好でソフト感に富む糸となる。
【0003】上記のような仮撚り加工糸とは別に、フィラメント糸よりなる原糸に対し、起毛加工を施すことにより製造した毛羽加工糸というものが知られている。この起毛加工は、原糸を、例えばヤスリ等のような粗面体に対して擦過させることにより、フィラメントをランダムな位置で切断して糸条の表面に毛羽を形成する加工方法である。この毛羽加工糸は、例えば羊毛、綿等といった天然繊維のような毛羽を有することにより、嵩高く、暖かみを有する糸となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のような仮撚り加工糸は、フィラメントの表面が滑らかであるため、織物及び編物を形成したときに交差する糸条同士が滑り、その滑った糸条が位置ずれすることにより、織り目及び編み目がきれいに揃わず、そこに穴が空く等といった不具合を生ずるおそれがある。毛羽加工糸ならば、その表面に毛羽が形成されていることから織物及び編物を形成したときに交差する糸条同士の滑りを抑制することができる。だが、糸条の芯部が直線状のフィラメントより形成されているため、表面の毛羽により嵩高くなってはいても、仮撚り加工糸と比較して肌触りが良好でソフト感に富むとは言い難い。
【0005】そこで、上記のような仮撚り加工糸を原糸として使用し、これに対して起毛加工を施すことにより、仮撚り加工糸及び毛羽加工糸のそれぞれの特徴を兼ね備えた糸条を製造することが考えられた。ところが、この糸条を製造するには、仮撚り加工を施した後、起毛加工を施さねばならず、2種類の加工をそれぞれ施す作業が煩雑となり、連続して安価に生産することができないという問題があった。加えて、仮撚り加工時にフィラメントにより形成されたループの輪の中に、起毛加工時に形成された毛羽の先端が入り込んで引掛かり、あたかも面ファスナーのように糸条同士が互いにくっつきあう現象(ベルクロエフェクト)が生じやすく、織物又は編物を形成しづらいという問題もあった。
【0006】この発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、糸条の表面に毛羽を備え、嵩高感に優れ、肌触りが良好でソフト感に富むとともに、ベルクロエフェクトを生じにくくすることができる特殊仮撚り毛羽加工糸並びにそれを使用した織物及び編物を提供することにある。その他の目的とするところは、糸条の表面に毛羽を備え、嵩高感に優れ、肌触りが良好でソフト感に富むとともに、ベルクロエフェクトを生じにくい特殊仮撚り毛羽加工糸を連続して安価に生産することができる特殊仮撚り毛羽加工糸の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1に記載の特殊仮撚り毛羽加工糸の発明は、フィラメント糸よりなる原糸に対し、その表面を毛羽立たせるための摺接部材に擦過させながら仮撚り加工を施すことにより形成され、その表面に毛羽を備えたことを特徴とするものである。
【0008】請求項2に記載の特殊仮撚り毛羽加工糸の発明は、請求項1に記載の発明において、前記摺接部材は、少なくとも原糸が擦過される箇所に粗面を有するセラミックスであることを特徴とするものである。
【0009】請求項3に記載の特殊仮撚り毛羽加工糸の製造方法の発明は、フィラメント糸よりなる原糸を給糸し、この原糸を、加撚及び解撚の少なくとも一方を施しつつ、原糸の表面を毛羽立たせるための摺接部材に対して擦過させることにより、仮撚り加工を施すと同時に、その表面に毛羽を形成することを特徴とするものである。
【0010】請求項4に記載の特殊仮撚り毛羽加工糸の製造装置の発明は、フィラメント糸よりなる原糸を給糸する原糸供給部と、前記原糸供給部から供給される原糸を加撚するとともに解撚する仮撚り加工部と、仮撚り加工部の上流側及び下流側の少なくとも一方に配設され、加撚時又は解撚時の原糸が擦過されることにより、その表面を毛羽立たせるための摺接部材とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】請求項5に記載の織物の発明は、請求項1又は請求項2に記載の特殊仮撚り毛羽加工糸を使用して織り上げて得られるものである。請求項6に記載の編物の発明は、請求項1又は請求項2に記載の特殊仮撚り毛羽加工糸を使用して織り上げて得られるものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は実施形態の特殊仮撚り毛羽加工糸のある一箇所を拡大した図である。特殊仮撚り毛羽加工糸は、タスラン糸11を使用して製造され、その表面全体には多数の毛羽12が形成されている。前記タスラン糸11は、複数本の長繊維(フィラメント)が撚り合わさって構成されたフィラメント糸よりなる2本の原糸に対し、混繊処理を施すことにより製造されている。また、タスラン糸11は、複数本のフィラメントが絡み合うことにより、糸条の周囲360°に立体展開されるようにループ、コイル等を有しており、嵩高く、ソフトな糸である。
【0013】前記毛羽12は、タスラン糸11に仮撚り加工を施すとともに、その加工時において起毛加工を施すことにより形成されている。タスラン糸11に仮撚り加工を施すと、糸条全体が揉まれることにより、嵩高感に優れ、ソフト感に富む糸となる。前記起毛加工は、この仮撚り加工の加撚時及び解撚時において、その表面が粗面状をなす摺接部材としての砥石に対し、タスラン糸11を摺接させながら擦過させることにより行われる。
【0014】加撚時及び解撚時のタスラン糸11に上記のような起毛加工を施すと、糸条の表面のループ、コイル等が伸ばされた状態で砥石に擦過され、ランダムな位置で擦り切れる。すると、それまでループ、コイル等を形成していたフィラメントは立毛し、多数の毛羽12を形成するようになっている。また、毛羽12は、起毛加工により形成されるだけでなく、仮撚り加工時において、加撚時及び解撚時に糸条の強撚された箇所でループ、コイル等がランダムな位置で撚り切られることによっても形成されるようになっている。
【0015】従って、2本の原糸より製造されたタスラン糸11に対して仮撚り加工を施した結果、タスラン糸11は糸条全体が揉まれることにより、嵩高感に優れ、ソフト感に富むものとなる。また、仮撚り加工の加撚時及び解撚時に起毛加工を施すことにより、タスラン糸11の表面のループ、コイル等を伸ばした状態で効果的に切ることが可能であり、糸条の表面全体に多数の毛羽12を効率よく形成することが可能となる。そして、糸条の芯部に形成されたループ、コイル等と、糸条の表面に形成された多数の毛羽12との相乗効果により、製造された特殊仮撚り毛羽加工糸は、嵩高感に優れ、肌触りが良好でソフト感に富むものとなる。
【0016】また、糸条の表面のループ、コイル等の大半が切られることにより、形成された毛羽12の先端がループ、コイル等により形成された輪の中に入り込み、引掛かることによって、糸条同士があたかも面ファスナーのように互いにくっつきあう現象(ベルクロエフェクト)が発生することを防止することができる。加えて、起毛加工は、仮撚り加工の加撚時及び解撚時に施されるため、特殊仮撚り毛羽加工糸を連続して安価に生産することができる。
【0017】次に、特殊仮撚り毛羽加工糸の製造装置について説明する。図2に示すように、製造装置の最も上流側には原糸供給部を構成する混繊機構20が配設されている。この混繊機構20は、左右に対向配置された各一対の第1供給ローラ21a及び第2供給ローラ21bと、その下流に配設された混繊ノズル22とから構成されている。第1原糸11a及び第2原糸11bは、図示しないストッカ等から第1供給ローラ21a及び第2供給ローラ21bにより導出されるとともに、混繊ノズル22の手前で合流されるようになっている。そして、混繊ノズル22内において、第1原糸11a及び第2原糸11bに対して糸条の走行方向と交差する方向からジェットエアが吹付けられることにより、エアの撹乱作用で第1原糸11a及び第2原糸11bが混繊処理され、タスラン糸11が形成される。
【0018】混繊ノズル22の下流には仮撚り加工部30として、上流側から順番に一対の第1フィードローラ31、第1ヒータ32、回転体33、一対の第2フィードローラ34及び第2ヒータ35が配設されている。混繊ノズル22から第1フィードローラ31により加撚区域30aへと引き出されたタスラン糸11は、第1フィードローラ31及び第2フィードローラ34の間で瞬間的に把持され、この状態で回転体33が回転することにより加撚される。この回転体33の回転による加撚区域30aでのタスラン糸11の撚りは、第1ヒータ32内を通過する際に加熱保持される。回転体33を通過したタスラン糸11は、解撚区域30bで解撚されるとともに、解撚されたタスラン糸11の撚りが第2ヒータ35により加熱保持される。第2ヒータ35の下流にはデリベリローラ36が配設されるとともに、その側方にはドラム37及びチーズ38が配設されており、第2ヒータ35を通過してデリベリローラ36に達した糸条は、ドラム37により移動されてチーズ38に巻き取られるようになっている。
【0019】前記第1ヒータ32及び回転体33の間と、回転体33及び第2フィードローラ34の間には、それぞれ給糸ガイド41及び摺接部材としてのセラミックス42が配設され、加撚区域30a及び解撚区域30bを通過中のタスラン糸11に起毛加工を施すようになっている。ここで、回転体33及びセラミックス42の構成について説明する。
【0020】図3に示すように、前記セラミックス42は、厚みを有する円環状をなし、その外面及び内面の全体が粗面状に形成されるとともに、内周面の上下端にはセラミックス42の内側に向かうほど縮径するテーパ部42aを有している。前記回転体33は、円筒状をなす本体部33aと、本体部33aの上下両端に固定された円板状をなす一対のガイド板33bとより形成され、図中に2点鎖線で示す支持部材43により回転可能に支持されている。このガイド板33bは、その直径が前記セラミックス42の内径よりも長くなっている。
【0021】本体部33aの内部には、その軸線方向と直交する方向に延びるように略円柱状をなすファインセラミックス、サファイヤ等よりなる巻部33eが取り付けられており、本体部33a内を通過する糸条がこの巻部33eに1回のみ巻き付けられるようになっている。回転体33は、本体部33aの周面に横向きの矢印方向に移動する駆動ベルト44が掛装されることにより、時計方向に回転するようになっている。なお、この実施形態において、回転体33は時計方向に回転するようになっているが、反時計方向に回転するように構成してもよい。また、前記給糸ガイド41は、回転体33の回転中心を通る軸線上に配設されている。
【0022】各ガイド板33bの周縁部にはそれぞれ1つの給糸穴33cが設けられている。これら給糸穴33cは、上部及び下部で互いに正反対に位置するように配設されている。また、各ガイド板33bの給糸穴33cと対応するように本体部33aの上部及び下部周面にはそれぞれ給糸穴33dが設けられている。前記給糸ガイド41を通過したタスラン糸11は、セラミックス42の内側を通って上部のガイド板33bの給糸穴33c内に挿通されるとともに、この給糸穴33cから上部の給糸穴33dを通って本体部33a内に挿入されている。そして、タスラン糸11は、本体部33a内から下部の給糸穴33dを介して下部のガイド板33bの給糸穴33c内に挿通されるとともに、ここからセラミックス42の内側を通り、給糸ガイド41へと送られ、製造装置の下流側へと進む。
【0023】回転体33は、給糸ガイド41及びガイド板33bの給糸穴33cにタスラン糸11が挿通された状態で回転するようになっている。このとき、タスラン糸11は、ガイド板33bによりセラミックス42の軸線方向と直交する面内で回転する。この状態で、給糸穴33cは、その直径がセラミックス42の内径よりも長いガイド板33bの周縁部に設けられていることから、セラミックス42の軸線方向と直交する面内におけるタスラン糸11の回転半径は、セラミックス42の内半径よりも大きくなっている。このため、タスラン糸11は、図中に2点鎖線で示すように、セラミックス42の内周面に摺接されながら、製造装置内をその上流側から下流側へ向かって送られる。
【0024】そして、製造装置内を上流側から下流側へ向かうタスラン糸11がセラミックス42の内周面に対して摺接されるとともに、擦過されることにより、その表面のフィラメントが擦り切れて毛羽12が形成され、起毛加工が施されるようになっている。また、セラミックス42にはテーパ部42aが設けられることにより、タスラン糸11はセラミックス42の角部等に点接触することを抑制され、作業中における断ち切れが防止されている。
【0025】次に、上記特殊仮撚り毛羽加工糸の製造方法について説明する。さて、図2に示すように、まず、混繊機構20において、フィラメント糸よりなる第1原糸11a及び第2原糸11bがそれぞれ第1供給ローラ21a及び第2供給ローラ21bを経て給糸され、混繊ノズル22の手前で合流される。そして、合流された第1原糸11a及び第2原糸11bが混繊ノズル22内にて混繊処理されることにより、タスラン糸11が製造される。このとき、タスラン糸11には第1原糸11a及び第2原糸11bを構成するフィラメントにより、ループ、コイル等が形成される。この後、製造されたタスラン糸11は、第1フィードローラ31により仮撚り加工部30へ給糸される。
【0026】仮撚り加工部30へ給糸されたタスラン糸11は、まず加撚区域30aにおいて加撚されるとともに、その撚りが第1ヒータ32で加熱保持される。次に、第1ヒータ32を通過したタスラン糸11は、給糸ガイド41を介してセラミックス42の内側へと送られる。このセラミックス42の内側において、タスラン糸11は、加撚された状態で、回転体33の回転によりセラミックス42の内周面に摺接されつつ、さらに擦過される。すると、フィラメントにより形成されたループ、コイル等は、糸条が強撚されることにより撚り切れるとともに、セラミックス42により伸ばされた状態でランダムな位置で擦り切れ、毛羽12を形成する。
【0027】その後、セラミックス42を通過したタスラン糸11は、回転体33内に引き込まれ、その内部を通過し、解撚区域30bへと送られる。この解撚区域30bにおいて、タスラン糸11は、解撚されながら、セラミックス42の内周面に摺接されつつ、擦過されることにより、加撚区域30aにて切断されなかったループ、コイル等までも切断され、その表面にあるループ、コイル等の大半が毛羽12となる。そして、セラミックス42内を擦過した後、給糸ガイド41を介して第2フィードローラ34へと送られる。
【0028】この後、原糸は、第2フィードローラ34を経て第2ヒータ35内に引き込まれ、解撚された撚りが加熱保持されて特殊仮撚り毛羽加工糸が形成される。そして、形成された特殊仮撚り毛羽加工糸はデリベリローラ36を経てドラム37により移動されてチーズ38に巻き取られる。
【0029】前記毛羽12は、糸条がセラミックス42の内周面に摺接されながら、加撚区域30aにおける加撚と、解撚区域30bにおける解撚との繰り返しにより、フィラメントが擦り切れたり、撚り切れたりして形成される。また、原糸は加撚及び解撚の繰り返しで揉まれることにより、その柔軟性が増しており、糸条全体が嵩高感に優れ、ソフト感に富むものとなる。加えて、仮撚り加工時に、これとほぼ同時に起毛加工が施されるため、2種類の加工作業を別々に施す必要が無く、特殊仮撚り毛羽加工糸を連続して安価に生産することができる。
【0030】次に、図2に示す装置を用いて以下の条件で仮撚り加工を行った。
第1原糸11a:ポリエステル、150デニール/48フィラメント第1原糸11aのオーバーフィード率:+3%第2原糸11b:ポリエステル、150デニール/96フィラメント第2原糸11bのオーバーフィード率:+20%混繊ノズル22のエアー圧力:686.5kPa第1フィードローラ31及び第2フィードローラ34の間のオーバーフィード率:−3%回転体33の回転数:3万rpm第2フィードローラ34及びデリベリローラ36の間のオーバーフィード率:+10%デリベリローラ36及びドラム37の間のフィード率:+7%第1ヒータ32の温度:200℃第2ヒータ35の温度:150℃上記のような加工条件で特殊仮撚り毛羽加工糸を得ることができた。
【0031】以上のようにして製造された特殊仮撚り毛羽加工糸をタテ糸又はヨコ糸の少なくとも一方に使用して織りあげることにより織物が得られ、編機で平編み、横編み、丸編み等して編みあげることにより編物が得られる。そして、この特殊仮撚り毛羽加工糸を使用した織物及び編物は、糸条の表面において多数の毛羽12が高密度で立体的に発生することにより、糸条同士が滑りにくいため、そこに穴が形成される等の不具合が防止される。さらにはベルクロエフェクトを生じにくいため、織物及び編物を形成する際、例えばチーズから引き出す途中の糸条同士が互いにくっつきあい、絡み合う等の不具合が発生せず、織物及び編物が形成しやすくなる。また、ベルクロエフェクトを生じにくいため、ミシン糸等にも適している。さらに、織物及び編物は、高嵩高性で感触が柔らかく、肌触りが良好なものとなる。
【0032】前記の実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・ 特殊仮撚り毛羽加工糸は、フィラメント糸よりなる2本の原糸に混繊処理を施すことにより製造されたタスラン糸11を、仮撚り加工を施しながら、その加撚時及び解撚時に砥石に摺接させながら擦過させることにより形成されている。このため、嵩高く、ソフトな糸であるタスラン糸11に仮撚り加工を施した結果、タスラン糸11が糸条全体で揉まれることにより、特殊仮撚り毛羽加工糸は、さらに嵩高感に優れ、ソフト感に富むものとすることができる。加えて、ループ、コイル等を形成していたフィラメントがランダムな位置で擦り切れることにより、糸条表面に多数の毛羽12を効率よく形成することができ、肌触りを良好なものとすることができる。さらに、糸条表面のループ、コイル等の大半が切られることにより、形成された毛羽12の先端がループ、コイル等により形成された輪の中に入り込み、引掛かることによって、糸条同士があたかも面ファスナーのように互いにくっつきあう現象(ベルクロエフェクト)が発生することを防止することができる。
【0033】・ 特殊仮撚り毛羽加工糸の製造装置は、回転体33の上流側及び下流側に円筒状をなすセラミックス42をそれぞれ備えている。この製造装置内を上流から下流へと進行する糸条は、回転体33を通過する前の加撚時及び通過した後の解撚時にこれらセラミックス42に摺接され、擦過することにより仮撚り加工と同時に起毛加工を施されるように構成されている。そして、この製造装置を使用した製造方法ならば、特殊仮撚り毛羽加工糸を連続して大量に生産することができ、単価当たりの製造コストを低減することができるため、安価なものとすることができる。
【0034】・ 特殊仮撚り毛羽加工糸により形成された織物及び編物は、糸条の表面において多数の毛羽12が高密度で立体的に発生することにより、糸条同士が滑りにくいため、そこに穴が形成される等の不具合を防止することができる。さらにはベルクロエフェクトを生じにくいため、織物及び編物を形成する際、例えばチーズから引き出す途中の糸条同士が互いにくっつきあい、絡み合う等の不具合が発生せず、織物及び編物が形成しやすく、ミシン糸等にも適している。さらに、織物及び編物は、高嵩高性で感触が柔らかく、肌触りが良好なものとなる。
【0035】なお、各実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 上記の実施形態において、製造装置は、第1ヒータ32及第2ヒータ35を有しているが、これに限定されず、例えば第2ヒータ35を省略したり、第1ヒータ32及第2ヒータ35の両方を省略したり等して構成してもよい。このように構成した場合、製造装置の構成を簡易なものとすることができるとともに、糸の種類によっては加熱により収縮するものがあるため、その収縮を防止することもできる。
【0036】・ 上記の実施形態において、製造装置の最も上流側には混繊機構20が設けられ、ここでタスラン糸11を形成していたが、この混繊機構20を省略し、原糸供給部から1本の原糸のみを第1フィードローラ31に給糸してもよい。あるいは、3本以上の原糸を給糸してもよい。また、少なくとも1本給糸される原糸には、予め製造されたタスラン糸を使用したり、タスラン糸に限らず、糸条の一部に混繊処理が施されたインターレース糸を使用したり、又は何も前処理されていない通常のフィラメント糸、普通の加工糸を使用したり等してもよい。例えば、図4に示すように、原糸として普通の加工糸11を使用した場合には、タスラン糸と比較して毛羽12が長く形成されるようになっており、糸条同士が滑りにくく、織物及び編物としたとき、織り目及び編み目に穴が形成される等の不具合が防止されるとともに、織物及び編物がほつれることをも防止することができる。さらに、タスラン糸、インターレース糸等といった糸を形成する原糸には、アセテート系、レーヨン系、ナイロン系、ポリエステルカチオン系のフィラメント糸を使用してもよい。加えて、第1原糸11a及び第2原糸11bを互いに材料の異なるフィラメント糸としてもよい。
【0037】・ 第1原糸11a及び第2原糸11bにそれぞれ互いに異なる色に着色された原着糸を使用してもよい。このように構成した場合、タスラン糸11の糸条全体で色合いの異なるエアー加工糸及びエアー加工仮撚糸を得ることができる。
【0038】・ 上記の実施形態において、摺接部材にはセラミックス42を使用したが、これに限定されるものではなく、例えばタスラン糸11が摺接される箇所が粗面加工された矩形状の金属板、合成樹脂等としたり、あるいは粗面を有しなくとも、刃状、針状等とし、糸条の表面を削ったり、あるいは引っかかりを与えたり等してフィラメントを切断し、毛羽立たせることが可能なものであれば摺接部材として使用してもよい。
【0039】・ 上記の実施形態において、給糸ガイド41及びセラミックス42は加撚区域30a及び解撚区域30bのそれぞれに配設されているが、加撚区域30aのみに配設したり、又は解撚区域30bのみに配設したりしてもよい。
【0040】さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記原糸にはエアの撹乱作用による混繊処理が施されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の特殊仮撚り毛羽加工糸。このように構成した場合、糸条の表面により効果的に毛羽を形成することができる。
【0041】・ 前記原糸を2本給糸し、これら原糸に混繊処理を施した後、混繊処理を施して得られた糸を加撚しつつ、原糸の表面を毛羽立たせるための摺接部材に対して擦過させることを特徴とする請求項3に記載の特殊仮撚り毛羽加工糸の製造方法。このように構成した場合、糸条の表面により効果的に毛羽を形成することができる。
【0042】・ 前記仮撚り加工部には、加撚された原糸の撚りを加熱保持するための第1ヒータ及び解撚された原糸の撚りを加熱保持するための第2ヒータのうちの少なくとも一方を設けることを特徴とする請求項4に記載の特殊仮撚り毛羽加工糸の製造装置。このように構成した場合、糸条に嵩高感及びソフト感をより効果的にに付与することができる。
【0043】・ 前記仮撚り加工部よりも上流側には、原糸供給から供給される原糸をエアーの撹乱作用により混繊処理する混繊機構を備えることを特徴とする請求項4に記載の特殊仮撚り毛羽加工糸の製造装置。このように構成した場合、糸条の表面により効果的に毛羽を形成することができる。
【0044】・ 前記摺接部材は、円筒状をなし、少なくとも原糸が擦過される箇所に粗面を有するセラミックスであり、このセラミックスの下流側又は上流側にはセラミックスの軸線方向と直交する面内で原糸を回転させるガイド板を備えるとともに、セラミックスの軸線方向と直交する面内における原糸の回転半径をセラミックスの内径の半分の値よりも大きくすることにより、セラミックスの内周面に原糸を摺接させることを特徴とする請求項4に記載の仮撚り加工糸の製造装置。このように構成した場合、原糸を効率よくセラミックスに摺接させることができる【0045】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれば、次のような効果を奏する。請求項1に記載の発明によれば、糸条の表面に毛羽を備え、嵩高感に優れ、肌触りが良好でソフト感に富むとともに、ベルクロエフェクトを生じにくい糸を得ることができる。
【0046】請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、毛羽をより効率よく製造することができる。請求項3及び請求項4に記載の発明によれば、糸条の表面に毛羽を備え、嵩高感に優れ、肌触りが良好でソフト感に富むとともに、ベルクロエフェクトを生じにくい特殊仮撚り毛羽加工糸を連続して安価に生産することができる。
【0047】請求項5及び請求項6に記載の発明によれば、その表面に毛羽を備え、嵩高感に優れ、肌触りが良好でソフト感に富む織物及び編物を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】599141353
【氏名又は名称】カワボウテキスチャード 株式会社
【出願日】 平成13年3月9日(2001.3.9)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣 (外1名)
【公開番号】 特開2002−266191(P2002−266191A)
【公開日】 平成14年9月18日(2002.9.18)
【出願番号】 特願2001−67291(P2001−67291)